二代目理事長の非常識な日本語学校経営 二代目理事長の非常識な日本語学校経営

※この記事は2019年1月~2020年1月に取材した内容に元に作成しています。そのため、現在の状況とは異なる場合がございます。

4限目
生徒指導

日本語指導の枠におさまらない密なサポート

理想を押し付けるのではなく、意図を説明することが大切

中村
中村
生徒指導やサポートについてお伺いしたいのですが、なにか特徴はありますか?
太田
太田
おそらく他の日本語学校さんと比べて、サポートが幅広いです。学校内はもちろんですが、学校外のサポートというか指導はきめ細かに行っています。
中村
中村
例えばどういったことを?
太田
太田
基本的なことで言うと、学校内のあいさつ授業後の掃除です。
中村
中村
学生が掃除をするのですか?
太田
太田
はい、教育の一環として。しっかりとした掃除ではなくて、使ったものをきれいにする習慣です。あとホワイトボードを消したり、先生たちの荷物を学生たちが運んだりしてくれています。本人たちも嫌がらず自主的にやるようになってきます。
中村
中村
いい習慣ですね。
太田
太田
私は掃除が反対だったんです。掃除をやらせる学校と思われたら学校のイメージにも影響してくるので。でも、他の教務主任や先生が賛成で、じゃあ1回やらせてみようとなりました。
中村
中村
同じことを始めても、学校によってはマイナスになることがありますよね。
太田
太田
こちらの理想を押し付けるのは不満を生んでしまうので、意図をきちんと説明するというのが大事だと思います。何よりも大事なのが、先生たちも掃除するんですよ。
中村
中村
あぁ、なるほど。
太田
太田
先生たちは教室はもちろん、トイレ掃除もやりますが、その姿を学生が見てるんです。なので、やらせてるというより、先生の掃除の一部をお手伝いをしてる感覚です。
中村
中村
掃除することで保護者からのクレームはありましたか?
太田
太田
聴講生の韓国女性の旦那さんから、なんで掃除させるんだ、それは労働だ!とクレームをいただいたことはあります。その時も事情をていねいに説明しました。
中村
中村
意図を伝えるっていうことですね。
太田
太田
やっぱり伝えてあげないと分からないですね。あれ?なんでやらないといけないんだって。
中村
中村
そうですよね。国の違いもありますもんね。掃除は本来はお手伝いさんがやるものという国もありますもんね。
太田
太田
ゴミの片づけや掃除を「罰」として考える国の方もいらっしゃるので。

母国の親御さんに「ありがとう」と感謝される生活習慣の定着

中村
中村
寮の点検もされていると聞きましたが。
太田
太田
はい。例えば寮の点検時に、汚かったり使い方が雑だったりすると注意します。あまりにも汚い場合は、学校を休ませて清掃させることもしています。こういうルールのもとに清掃させる場合があると事前に話はしています。

学生募集のときにサポート範囲をよく聞かれるのですが、進学やアルバイトのサポートはどの学校もやっていることですよね。でも、寮の掃除のサポートをしている学校はないので、そこまでやると送り出すご両親がこの学校だと安心できると感じていただけるし、学校としてもプラスになっていると実感しています。
中村
中村
寮の点検は事前通知ですか?抜き打ちですか?
太田
太田
事前に言います。明日は寮の点検なんで掃除をしてくださいと。その時に汚かったら明日の授業は休むことになりますよ、ということを伝えます。
中村
中村
月に何回ですか?
太田
太田
月1回です。 やはり普段行くときよりも全然きれいです(笑)。私たちとしては、その日だけでもキレイにしてくれるだけでもいいので。

抜き打ちではないのですが、寮のモノは故障すると修理や無償交換するんですね。その時に換気扇など細かい場所もチェックすることがあります。そのチェック表を学生に渡して掃除を促します。
中村
中村
プライバシーの観点で嫌がる学生もいると思うのですが、そこはしっかり説明するのですか?
太田
太田
寮の点検では個人の部屋には入らず、共用スペースだけの清掃チェックです。風呂場、キッチン、玄関とかしか見ないです。中がどれだけ汚いかはわからない(笑)。
中村
中村
さすがになかなか難しいですよね、そこまでは。
太田
太田
そうですね。必ず2人で行くようにしています。1人で行って、物の紛失などのトラブルが起きないために2人で行きます。
中村
中村
やはりきちんとした生活習慣を身につけるのも、教育の一環ですね。
太田
太田
実際にある親御さんからは、お子さんが日本語学校を卒業して帰国した時、行ったときと帰ってきた時の様子がまったく別人のように違ったと言っていただきました。で、そのご両親が日本に旅行に来た時に、わざわざご挨拶に来ていただいて、「ありがとう」と言ってくれたんです。やって良かったなと感じましたね。
中村
中村
すばらしいですね。
太田
太田
日本語の上達に関しては、日本語が分からないご家族では判断できませんが、生活習慣レベルですとほんの些細なことでも進歩を感じていただけるんですね。

その親御さんからの紹介で、当校に入学した学生が何人もいます自分の子どもの変化を口コミしてくれるので、それが学生募集につながっています。学生のために何ができるかを考え実行することが、循環して学校の利益につながっている実感があります。

寮を一括で借り上げ、低家賃を実現

中村
中村
少し話は逸れますが、寮に入る学生は何割ぐらいですか?
太田
太田
9割以上が寮で、一括借上げです。
中村
中村
学校で寮を用意するのは、学生個人だと契約できないからですか?
太田
太田
入学前にレオパレスさんなどを紹介しています。レオパレスであれば上海や北京などに代理店があって、現地で契約できるんです。そこで契約してもいいですよと伝えていますが、希望するのはほとんど寮ですね。
中村
中村
一部屋に何人くらいですか。あと家賃とかは?
太田
太田
1Kタイプで2人、2DKで2人もいます。1部屋に1人もありますし、もっと安くしたいという要望もあるので、希望すれば4人までです。家賃は一番安いのが1万4000円、一番高くて2DKで2万8000円です。
一括で借上げて、値段を下げています。
中村
中村
国柄によって要望は変わりますか?
太田
太田
中国の女性はきれいで大きくて、自分のスペースがあるのが好みのようです。wi-fiも無料でついていますしね。
中村
中村
入寮する時、国籍は揃えるのですか?バラバラですか?
太田
太田
それも希望を聞きます。中国の学生は同じ国同士で住みたいという希望が多いです。他の国の学生は、安くなるならどこの学生とでもいいというので、ミックスになります。

トラブルがあれば、休日でも生徒をサポート。学校が前に立って生徒を守る

中村
中村
学生が休みの間に、病気や交通事故などがあった際の緊急連絡はどうされていますか?
太田
太田
事務の窓口とは別に、私の携帯に24時間転送するようにしています。
中村
中村
初級で日本語ができないような学生の場合は、どうコミュニケーションを取るのですか?
太田
太田
できる言語とできない言語があって、例えばベトナムであれば私かベトナム在日官に連絡して、ちょっと何を言ってるか確認してほしいとお願いします。電話をもらえれば焦っている様子が分かるので、すぐに対処すべきか判断して依頼したりします。
中村
中村
多言語に対応できるのですね。
太田
太田
今ですと、インドネシア語、ベトナム語、中国語、英語の4ヶ国語対応ができています。なおかつ、すぐに連絡を取れるエージェントでは、韓国語、タイ語、タガログ語、レグレス語があるので、それらに対して対応しています。
中村
中村
なるほど
太田
太田
事務方のLINEグループを作って、今学生からこういう電話が来たので、近くにいる人すぐ行ってくださいといった連絡ができるような形をとっています。また、国ごとに連絡先もまとめています。

防災マニュアルも学校独自で作っているんですね。この寮に住んでいる学生は震度5強以上の地震がであれば、ここに避難してくださいという指針があります。有事の際に先生にも動いてもらう可能性があるので、教師、非常勤教師全員で連絡網を用意し、必ず生徒全員と安否確認が取れるものを作ったりとか。連絡網は半年に1回見直しています。

避難訓練も年に2回行っています。学生も含めた学校全体が1回、職員だけが1回です。
中村
中村
過去に学校外でのトラブルはありましたか?
太田
太田
警察の方からもお叱りを受けたことがありました。
中村
中村
学生の問題行動ですか?
太田
太田
空き巣と下着泥棒が2週連続で起きて、学生が被害者で通報したんです。それがなぜか犯人扱いされて、学校の管理がなってないと経理の人が取調室に呼ばれて怒られて(笑)。
中村
中村
とばっちりですね(笑)。でも、学校側が先頭に立ってくれると、皆さんが安心できますね。
太田
太田
地域住民の方にお叱りを受けるのは、基本的に私たちの役割です。いろいろと経験しているので。だから、何が起こっても落ち着いて対応できるようになりました。

責任の所在をはっきりさせるシンプルな方法

中村
中村
募集の段階で、真面目・不真面目の子を見極めるのは、回数をこなすと分かってくるものですか?
太田
太田
真面目と思っても、日本に来たら変わってしまうこともありますね。なので、話を聞きたい人だけ来てくださいと事前に伝えたり、当校の価値観や考えを伝えスクリーニングしています。むやみに間口を広げることはしていません。
それでも来てから変わってしまった学生の場合は、基本的には事務方が訪問したりとか。
中村
中村
そういったケアもされてるんですね。
太田
太田
何日間休んだら見に行ってくださいとか、休む時は電話で連絡をとるようにしているのですが、連絡をとらないケースもあるので、全部こちらで話をしたりとか。ケアも全部しています。

学生からも、卒業後に「そこまでやってくれる学校ってない」と言われます。
中村
中村
問題が発生した場合、事務のほうが責任持つのか、教師のほうが責任を持つのか線引はされていますか?
太田
太田
そういう問題が起きた場合は、一番最初に関わった人間が最後まで責任を持つ、というのが私たちの決めごとです。
中村
中村
なるほど
太田
太田
大きな事故の時には臨機応変に動く必要はありますが、最後の処理までは最初に対応した人じゃないと事後処理ができないです。そこは責任を持ってもらうようにしています。基本は事務の方で行くようにしていますが、私が行くこともあります。

無償のアルバイト紹介で企業と生徒をつなぎ、三方良しの循環型構造に

中村
中村
学生にとってアルバイトも重要だと思いますが、学業よりアルバイト生活に偏ることも考えられますが、いかがですか?
太田
太田
私たちはアルバイトを紹介しているんですね。ですので、アルバイトの状況も企業先から連絡がくるんですよ。アルバイトを休んでいて、学校も休んでいると、寮まで様子を見に行きます。すると実は病気でした、ということで病院に連れて行ってあげたりとか。
中村
中村
情報交換されているんですね。
太田
太田
はい。アルバイトは週28時間を徹底してもらっていて、それを理解した上で採用してもらっています。ダブルワークはなかなか見つけにくいのですが、教室に入ってくると分かります。小さい町なので、たまたま見つけることもありますね。
中村
中村
どんなアルバイトを紹介しているのですか?
太田
太田
いろいろですね。サービス業、飲食関係が多いです。ホテルもあります。ホテルは清掃だけではなく、レストランとか朝食ビュッフェなどもあります。コンビニもありますね。
中村
中村
どれくらいの時期から働いていますか?日本語力が必要になってきますよね。
太田
太田
半年ぐらいです。
中村
中村
半年で働けるんですね。
太田
太田
半年で採用される学生もいますし、それより短い時期で働く学生もいます。採用側も「学生を育てる前提」なのを分かってくれているので、少しでも日本語を話せれば採用してくれます。その結果、日本語能力が伸びていきます。
中村
中村
日本語能力の向上にもなりますよね。
太田
太田
そうなんです。外国人に対してだんだんと採用側の理解が進んできました。以前だと中国の学生は、N2を持っていないとコンビニで働けなかったんです。ですが、人材不足も重なって、企業側も育てようという意識ができてきましたね。まず裏方の仕事から始めて、対面業務に移行するなど、柔軟になりました。
中村
中村
学生は週28時間しか働けないですが、そのタイミングもお手伝いしているのですか?
太田
太田
28時間を守ってもらうような勤務調整をします。私たちの方から、時給を少し上げてもらえませんか?と相談することもあります。
中村
中村
そんなことまで。
太田
太田
企業側もせっかく育ててきたのに、時給の高い職場に移られると困るんですね。ですので、10円でも高くと相談します。ある企業さんでは、ボーナスという形で皆勤月は1万円上乗せしてもらったり、工場ですと予定出荷個数を達成できた場合には1人3万円とか考慮していただいています。

その結果、人気のアルバイト先になりますし、学生にとっても高待遇になるので、ダブルワークする必要もなく健全になるんです。
中村
中村
好循環ですね。
太田
太田
すべて無償で紹介してるのですが、学生からは「裏で取ってんじゃないか?」と言われたりもします(笑)。
中村
中村
それはどうしてですか?
太田
太田
すべて無償で紹介してくれる学校は、当時はなかったので。当校はずっと慣行としてやってることです。当時の校長先生(長野国際文化学院)は、1件1件企業を回って、アルバイトやらせてくださいと直談判していました。

ですので、開校当初からずっとお世話になっているアルバイト先もあります。当校の学生を戦力として見ていただいているので、学生が卒業したら、入れ替わりで新しい学生をどんどん採用してくれていますね。
中村
中村
募集もしやすいですよね。募集した時に勤め先を紹介できる。
太田
太田
そうですね。大きい工場ですと、まったく喋らないで同じ作業を繰り返す職場がありますが、当校ではコミュニケーションを必要とする町工場ばかりですそのほうが学生の満足度が高いです。
中村
中村
ほぉ~。
太田
太田
社長夫婦が夜ご飯をごちそうしてくれるような企業と長く付き合っています。
中村
中村
そういう情報も生徒さん同士で交換したりするのですか?
太田
太田
ありますね。「入学したらここでアルバイトします!」という生徒がいます。なんで知ってるんだろうと(笑)。

職務環境の整備や仕組みが、充実した教育とサポートにつながる

中村
中村
ここまでのお話で、充実したサポートを実現するには、学校側の体制が大切ですね。
太田
太田
はい、そこがもっとも大切です。
日本語教育に関して言うと、生徒全員の先生であることが大切だと感じています。学生は、学校で働いているスタッフ全員を「先生」と呼ぶのですが、私たち先生の立場として、名前も知らない、クラスも分からない、午前か午後の生徒かも分からない、寮住まいかどうかも分からない、だとあまりにも失礼ですよね。

生徒の話題になると「あの学生のことですかね?」と話し合いますね。この学校は人数が今少ないからいいですが、諏訪の学校(長野国際文化学院)は人数が多くなってきたので、顔写真を職員室に貼ってあるんです。
中村
中村
なるほど、そういう対策をされてらっしゃるんですね。
太田
太田
生徒の寮の一覧表も貼ってあって、それを見れば分かるようになっています。クラスを持ってない先生でも、その紙を見るだけで、どのクラスの誰のことを言っているのかっていうのは分かります。
中村
中村
ミーティングの時に、話しているのか分かるってことですね。
太田
太田
その場で分からなくても、後でこの学生ですよと言ったら、あー見たことある、そういうタイプなんだねという話ができますよね。そういう部分で少しずつコミュニケーションを取ってもらうのが大事になってきます。
中村
中村
素晴らしいですね。普通は、学生のためにいかに環境を作るか?ですが、大田さんの話を聞くと、まずは教師や事務の環境づくりを大切にされていますよね。先生の授業のコマ数が少なくなれば余裕が出るから、生徒にもっと良い教育が施せるし、もっと余裕を持ってフォローしてあげれる。学生が先生を気に入れば紹介からの応募につながるし、良い循環ができているのを感じます。

発想の出発点を変える

太田
太田
もちろん最初は学生中心のスタートなのですが、結局学生のためとなると「日本語を上達してもらうにはどうしたらいいのか?」という発想になりますよね。

そうすると、先生が授業を持ちつつ学生のために何かやれと言われても、余裕がなく何もできないと思うんです。寮の点検、掃除の指導、進学指導、運動の手伝い、面接の準備などをして、授業は24コマ行うのは、まず無理ですね。

結局、先生もどこかで力を抜かないといけない。そう考えていくと、まったく学生のためにはならないんです。そもそも、まずは学生のために力を入れられる先生を増やさないといけないですし。
中村
中村
なるほど。発想の出発点が違うのですね。
太田
太田
なので、当校は事務も人数が多いんですね。教務と事務の役割分担を分けて、負担を軽減しています。
教務は授業を中心に行い、事務は寮の点検、掃除、進学などの生活指導を徹底して、日本の生活に必要な部分をサポートしています。そうすることで、それぞれの業務により一層注力できるようになっています。指導なら指導を手厚くし、授業ならきちんとした日本語が習える授業をする、それを徹底してもらうのが、学生のためになるという考えです。
中村
中村
分かりやすいです。担任の先生に何でも相談するという感覚の学校さんが多い気がするので。
太田
太田
ざっくり線引すると「学校内は先生、学校外は事務」という感じです。
学生も在学期間中は正直うるさいなと思うかもしれないですが、学校を出た後に自分がきっちり生活できていることにようやく気づきます。中には、進学先の寮で寮長になり、1年間の寮費が無料になる子もいますね。
中村
中村
なるほど、指導ができるから。
太田
太田
ぜんぶ学生のためにつながっているのかなと思っています。

お問い合わせ・ご相談

本気で日本語学校の設立をお考えの方は、
余裕を持って長期的視野で検討されることをオススメします。

ご相談の際、学校さまの状況次第で、ご希望月の申請ができない場合がございますので、お早めにご相談ください。
〒134-0088
東京都江戸川区西葛西6-13-12 第一大高ビル5F
TEL 03-3686-2366 FAX 03-3686-2398
Follow us
© Happiness administrative scrivener office.
遠方の方、詳しく知りたい方
資料ながら悩み解消
Web相談