二代目理事長の非常識な日本語学校経営 二代目理事長の非常識な日本語学校経営

※この記事は2019年1月~2020年1月に取材した内容に元に作成しています。そのため、現在の状況とは異なる場合がございます。

5限目
教育内容

より良い教育を提供するためには、環境づくりから

既存校とは違う新しい教材に。先生全員で教材を良くしていくための仕組みづくり

中村
中村
松本国際日本語学校では、既存校(長野国際文化学院)とは違う新たな試みをやられていますか?
太田
太田
日本語学校を30年以上やっているので、カリキュラムを新しく動かすのは難しいものはありました。
ただ、新学校でも同じだと面白くない。今の留学生にとって30年前の日本語教育とマッチしているのか?というのもあったので、教え方であったり、メイン教材はそのままに副教材を変えてみたりしています。
既存校(長野国際文化学院)とは別のやり方をやってみようということで、新しい教材を取り入れてもいます。
中村
中村
その他の工夫などはありますか?
太田
太田
あと、既存校(長野国際文化学院)は進学のための日本語学習が基本ですが、松本国際日本語学校では、就職のニーズも汲んでいきたいと思っています。最近では特定技能が出てきたので、さまざまなニーズに合わせられる日本語学校があっても面白いんじゃないかなと、いろんな試みができるように準備しています。
中村
中村
ニーズに合わせて変化させていくってことですね。
太田
太田
先生間でそのような共通認識を持ってもらい、授業に関しても今までにはないものにするために、パワーポイントをメインに使って授業しています。パワーポイントを教案代わりにして、クラウドで管理し手を加えていきながら、1つの教案をみんなでより良くしていくことにしています。

既存校(長野国際文化学院)では授業担当者が1つの教案を作るのですが、広がりの限界を感じていました担当者のレベルで限界が変わるのは、学習者にとってはどうなんだろう感じていたので、新規校では初級から初中級に関しては広がりをつくるためにそうしています。

初級の理解力に力を入れて会話力などを高められるようにし、中級、中上級に関しては教科書にして、本格的にJLPT対策に向けていく形を取っています。
中村
中村
なるほど
太田
太田
さらに、授業に付随して、地域の中学生と交流するアイディアも出るようになってきました。やはり生の日本語を聞かせることもできますし、給食も食べさせてもらったり、そのように日本文化を体験することで、日本の学校を知ってもらいたいと思っています。

授業体制におけるユニークな工夫とは?

中村
中村
御校はすごく授業の体制も工夫されていますね。携帯を置いてもわかるように、机の下が網状の物置になっている。
太田
太田
私が選んだものなのですが、全部ここが見れるようにしてます。カンニング防止や携帯をここに置いて触らないように。
中村
中村
授業の時にスマホ使いながらというトラブルないですか?
太田
太田
基本的には使用禁止にしています。使用していいのは調べ物をする時に限ってますね。みんな実際使ってますけど・・・。
中村
中村
透けてるけど、おかまいなし(笑)
太田
太田
使っている人は使ってますね。諏訪の既存校(長野国際文化学院)では、携帯を完全に禁止しています。もし使用した場合は、1回目は注意、2回目は最後まで預かるようになってます。なので学校が終わるまで預かる。そうすると以降はほとんど使わなくなります。そこまで徹底してやります。

日本語学校の役割は「進学」だけではなくなった。

中村
中村
一番多い中国の学生は、やはり大学進学が多いのですか?
太田
太田
大学進学が多いですが、専門学校もちょっとずつ増えてきましたね。やはり仕事をするためには手に職が必要なので、専門学校で技術を磨いて仕事をしたいと思って来る学生も増えてきています。
もう中国では、日本に留学して大学卒業したからって、いい職が見つかるとは限らないようです、国公立大ぐらいに入らないと。
中村
中村
就職は日本語学校としてはケアされているのですか?
太田
太田
これまでしてこなかったですが、学生のニーズが増えてきている中、就職もサポートのひとつと捉え始めてきたところですね。今までは進学前提の日本語教育でしたが、送り出す方としては最後まで面倒を見てあげたい想いがあります。
そうしないと、怪しい職業紹介に引っかかっちゃう学生もいるんです。20万円払えば職を紹介してくれるような。
中村
中村
そうすると、企業のパイプづくりなども視野に入ってきますか?
太田
太田
企業のパイプづくりは入ってくると思います。この学校をつくったきっかけの一つが、企業からの要望でもあったので、増えてくると思います。でも、どこまでやるのかは今後の検討ですね。踏み込んで行うのか、単純に就職説明会みたいな形の場を提供するだけにするのか。
中村
中村
いろんな形がありますね。
太田
太田
学生が変な就職紹介にひっかかってしまうので。
中村
中村
留学生が狙われてしまうということですか?
太田
太田
騙すのは母国の人なんですよね。同じ国の人同士が騙し騙されみたいになってくるので。ケアするためには情報をつかむ必要がありますが、自ずと就職の方もサポートすることになると思っています。
中村
中村
就職が希望なのに、いや大学だ!とかいかないですもんね。
太田
太田
私たちは、進学のためのカリキュラムやサポートであって、就職にあったカリキュラムではないことをきちんと伝えることはしていますあくまでも日本語さえ勉強していれば就職できるとは思わないでほしいことも。

足並みを揃えるために補講を先にする

中村
中村
漢字圏と非漢字圏の学生が一緒に授業を受けることもあると思うのですが、学力の差が出てきたときはどうされているのですか?
太田
太田
差は出てきてしまいます。ただ、今こちらの学校では、そこまで差は出てきていませんね。
もう1校(長野国際文化学院)では、差が出てきたら2年生では「4つ」にレベル分けしています。JLPTで言うと、N1クラス、N2クラス、N3N2クラス、N3クラスという形で分けています。どうしてもJLPTは合格してほしい、ということでそのように分けています。
中村
中村
今でいうとコミュニケーション能力の向上のために日本語教育に力を入れていきましょう、となってると思うのですが、学生にとってそこまで踏み込む必要はないですか?
太田
太田
コミュニケーション能力はやっぱりあったほうがいいと思います。ただ、どうやって養っていくのかは日本語ではなく、まず母語がきちんと話せるかどうかですかね。
中村
中村
まあ、高校生が来るわけですからね、まだお子さんですしね。

学生もクラスによって色が出るのですか?
太田
太田
そうですね。受入の段階で、日本語力が少し差がある状態で入国する学生が多いです。最初に能力差があると、後々大きな差になってしまうので、事前に補講という形で教えています。
中村
中村
補講を先にするんですね。
太田
太田
はい。
例えば、ひらがなカタカナが100%できない学生がいたら、そのためだけにひらがなカタカナをやっています。そういう時間に使えるように、週全体で16コマにしているのはあります。

丸一日8時間はやらず、1日最大4時間にしてると、時間としては半日分は空いてくるんですね。例えば、午前2コマ、午後2コマですと空かないんですけれども、半日空いていれば、その分別のことができるんですね。

やはりそこを大切にしていかないと、先生にこういう授業をやって欲しいというのが言えなくなってしまうので。理想だけ語って、N2・N1を取らせるためにと言っていても、先生たちの環境が整っていないのにN2・N1なんて、という話も出てきてしまうんですよ。
中村
中村
レベルの高い先生がいらっしゃっても、他の先生がどうなのかとかありますよね。やはり皆さんで研鑽を図っていかないと、学生のレベルアップっていうのは難しいところですかね。
太田
太田
そうですね。なので、大事なのは日々の会話、先生同士のコミュニケーションなんです。先生同士が1対1で話すことで、この学生は今日こんな調子だったとか共有できますよね。そうすると先生の時間が空いている方が話しやすい。

週をまたいでくる先生や会わない先生もいますので、きちんと共有しているとクラス運営がスムーズにいきますね。

留学生以外の受け入れで日本語教育の裾野を広げる

中村
中村
留学生以外にも受け入れていると聞きましたが。
太田
太田
私たちは「聴講生」と言っていますが、留学生以外の方たちも日本語を勉強してもらい、進学や目的・目標に向かって進めるようにしていきたいと思いまして。日本語教育が必要なら、勉強してもらうようしています。正直、採算は合わないんですけどね。
中村
中村
学生さんはいらっしゃるんですか?
太田
太田
います。本来であれば開校まで待ってもらった方がいいのですが、教務主任や先生が開校まで教壇に立たない状況が続くと、勘が鈍ってしまうというのがひとつ。あと、時間割の調整や先生の育成の意味もあります。
中村
中村
聴講生はどこの国の方ですか?
太田
太田
台湾が10名で、他は韓国、ネパール、中国、ベトナムの方もいます。日本人配偶者を持っている方が多いですね。
中村
中村
そういう方たちの授業は、留学生の方と一緒に?
太田
太田
一緒に授業してます。
中村
中村
学費は違いますか?
太田
太田
留学生と同じ学費(半年分)を日割り計算して、月謝という形でいただいています。それぞれ学習目的が違いますし、継続期間も不明なので、払いやすいような方法をとっています。ビザ申請がないので、入学金等は一切いただいてないです。

今はフェイスブックで募集広告をかけています。そこからの問い合わせが多いですね。来年4月からイギリス・イタリアの方が入ります。開校した当時は、ノルウェーの方もいました。
中村
中村
多国籍は学生にとっても、すごくいい環境ですよね。
太田
太田
白馬町が近いので、留学希望の欧米の方が何名かいますね。
中村
中村
聴講生は毎日授業を受けないのですか?そうすると授業が進んでしまったら進んだところからでも良しとするんですか?
太田
太田
ほとんどが毎日来ます来れない方は入学をご遠慮いただいています。例えば、週3日だけ通いたい自営業の方がいれば、ボランティア教室を紹介しています。そのほうがご都合に合うので。私たちは、平日の4時間を留学生と一緒に勉強してもらう形ですね。
中村
中村
遅れを取ることは、そんなにないのですね。
太田
太田
ないです。ちゃんと理解していただいた上で入学してもらっています。特別に聴講生用のコースを作るとなると、先生方の負担も増えてしまうのもあって。それよりは、勉強したいならそのつもりで・・・というスタンスです。留学生とまったく一緒ですね。

特定技能と日本語学校の役割、企業との付き合い方

中村
中村
これから日本語学校の存在意義は少しずつ変わってくるのかなと思います。留学→進学メインではしっかりした学校が残っていくと思うのですが、特定技能ビザ(1号・2号)ができて、日本語能力がさらに求められてくるようになりますよね。

そうすると、国の方も日本語教育をしてくれる学校を探すでしょうし、行政も探す。企業もその流れになると思うのですが、そこに日本語学校が関わってくところは何かありますか?どういう展開になってくのか?とか。
太田
太田
経営的な部分では、多様化するニーズに合うような形にしていった方がいいと思います。もちろん私たちは、日本語教育自体はしっかりしたものがあるので、その部分で必要とされるのであれば、協力していきたいと思っています。

逆に、今まで留学生と呼べないような留学生が減ること自体は、喜ばしいことだなという考えですね。今まで稼ぎを目的にしていた人たちが、ビザで入ってくるのはいいとは思います。

これまでは留学生からしかそういう道がなかったのが、いい方向にはなるんじゃないかなと。その中で日本語学校が残っていくとなると、やはりしっかりした受け入れができているか?だとは思いますし。

特定技能でも、協力してほしいという企業さんもすでに多いです。私たちが提案している方法としては、N4でいいよと言われるのをN3にするために、1年間学生で入国をさせてくださいと。

で、N3のカリキュラムでしっかり勉強してもらう。1年間しっかり勉強して就職するのはいいと思いますけど、N4でいいよと言われてしまうと、こちらはやることないので、それぞれの国々で募集してくださいということになります。
中村
中村
N3までをやってほしい気持ちは、どういった点からですか?
太田
太田
しっかりした日本語、N3レベルの到達ぐらいまで勉強してもらわないと、現実は生活に困ります。N4には「生活程度の会話力」という基準がありますが、実際にはN3でも生活できるか難しい部分があるんですね。

しっかり話もできる、しっかり意思疎通できるレベルは、正直N2・N1になってくる。ある程度就労される方も、学習意欲は見せて欲しいっていう想いでN3にしています。そのレベルにいけば、いま言われてる技能実習生などの問題も薄れてくるだろうし。

1年という期間は、日本の文化的、習慣的なものもしっかりこちらでも教えたいという意図もあります。日本語だけとなると、学校としてはしっかりとした人を育てたと言えないので。生活の部分もしっかり教えられる機関として関わりたいので、そういう部分も含めて企業さんにお話させてもらってますね。
中村
中村
企業側も中途半端な人材で本当にいいのかな?と私も考えることがあります。正確な意思疎通ができずに、本当にその人のスキルを出せるのか?と感じます。日本人と同じ給料で雇う側として、本当に能力が足りてるかというと現実はそうじゃない。だから、しっかり教育してくれる日本語学校に集中してくると思います。雇う側も誰でもいいわけではないですしね。
太田
太田
結局、困るのは受け入れる側の企業なので、そこはしっかり認識していただく必要がありますね。だから、いろいろな企業から話を受ける中で、こちら側から提案させてもらっています。
中村
中村
おそらく現場に丸投げなんでしょうね。うちも引っ越しをした時にまったく日本語が分からない方がいたのですが、意思疎通ができず作業が進まないんですよ。たぶん経営者は丸投げなので、現場がどうなってるか分からないし、人材がいればやれるだろうという意識だと思います。今後そういった問題が増えていくんだろうと思います。
太田
太田
実際に、短期集中で技能実習生の教育を組合からお願いされることあるんですね。結局、20日間全日コースになるので、ぜんぶお断りしています。
中村
中村
詰め込みですね。
太田
太田
日本語教育の本質とはズレているのではないかと。そういう方は、金額を安くしてくれって言うんですね。じゃあ、どうして受け入れる前にそれを考えなかったんだという思いは、組合に対してあったので。

段取り踏んだ受け入れをしっかりやるべきですし、結局困るのは組合なんですよね。それをまず最初に投げかけるのが、日本語学校というのはまず筋がおかしい。そういう部分でいただくお金はあまりクリーンではないというか。

ですので、企業と一緒にやるときは、ある程度日本の社会に飛び込めるように協力はできると、お話します。そこまでしてあげないと企業も困るだろうし、就労してる方もかわいそうなので。
中村
中村
言葉も喋れずむりやり現場に出されて、勉強する時間もないという感覚ですもんね。
太田
太田
技能時実習生が大量に増えたのは、ここ2、3年ですかね。今になって言葉に困ってると悩む企業さんがほとんどなんですね。最初は人手不足で受け入れてきたのが、今になって言葉が通じないから次の人が育たなくて困っていると。

日本語学校の在り方を忘れない

中村
中村
問題が山積みですね。
太田
太田
やっぱり言葉ですね。日本で生活するうえで、一番必要になるのが言葉なので。
中村
中村
特に日本語って簡単に覚えられるものじゃないですからね。
太田
太田
企業さんも困ったら、とりあえず日本語学校に連絡すればいいという考えがあるようです。日本語教師を派遣してほしいとよく相談されるのですが、うちはやっていないのでぜんぶお断りするんです。
最終的に泣きつく場所は行政なんですね。行政に紹介相談すると、私たちのところに来るんです。
中村
中村
そういう流れなんですね。
太田
太田
小さな町ですので。そこは雇う側がしっかり考えていくべきなのかなと。また、日本語学校も関わり方をしっかり考えないと、双方にとってよくないだろうと思います。
中村
中村
中途半端になってきますよね、いろいろ。
太田
太田
これは移民政策みたいなものだって言われていて、もっとひっちゃかめっちゃかになるんじゃないかなと。レベルを下げて日本語能力試験やJLPTではなく、別の試験を作ることも言われ始めています。N4レベルよりさらに低くても構わないという話も聞きます。そこは民間が関わることなので、できればそういう部分でも、しっかりケアしたほうがいいと感じます。
中村
中村
方針を決定している法務省には、現場にいる方の声をもっと聞いていただきたいと思います。ちょっと恐ろしいです。これは問題提起していくべきことですね。
太田
太田
日本語学校は今後大きく関わっていくと思いますが、単に利益追求ではなく、しっかりと協力するという日本語学校の在り方を忘れないようにしたいですね。
中村
中村
さっきおっしゃった通り、留学生と就労生とがこれから棲み分けされていく中で、やはり中途半端な日本語学校がきっと出てくるでしょうね。
太田
太田
そうなると、また日本語学校への締めつけも出てくると思いますけど。
中村
中村
レベルが低い学校が増えていくような気もします。N4でいいんだっていう。なんとなく箱さえつくって教育していけばいいという発想を持つ人も。
太田
太田
出てくると思います。今では、卒業要件が出席率75%以上と謳っている日本語学校もあります。
中村
中村
謳っちゃってるんですか?
太田
太田
出席率75%以上で、卒業証明書を発行しますと書いてあったんです。うちは85%以上なんですけどね。
中村
中村
せめて最低ラインは80%ですよね。
太田
太田
やはり学校運営するうえで、見えないルールを守って欲しいなと思います。

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