日本語学校での“事務スタッフ”を甘く見てはいけない!
日本語学校は、留学生(外国人)に、日本語を通して教育を行っていく機関です。教員がいなければ、教育の目的を果たすことができないので、どうしても重要なポジションとして“教員”が中心となってしまいます。教員がいなければ教育機関ではなくなってしまうので、この考えは間違いではないと、個人的には思います。
これから日本語学校の設立を考えている方の多くは、“教員”にばかり、目を向いてしまい“事務スタッフ”は、軽い考えをお持ちの方が、ほとんどであることが多いのです。「教員が事務を兼任して、あと、1人事務スタッフがいればいいや」なんて、甘く見ていると、痛い目を見ることになってしまいます。
開校前に、この“事務スタッフ”の存在について、後回しに考えてしまいがちな意識を、変えるきっかけとなり、より良好な日本語学校の運営に、役立てていただけたら幸いです。
生徒が外国人であるということ
生徒が外国人であるという点が、他の日本にある学校とは、大きく異なる性質があります。外国人を相手にするということで、ビザの管理等(最大2年)も、学校側で行うことになります。その管理では、問題があれば、学校側が入国管理局(以下、入管と言う)に、直接向かい、手続きを行わなければなりません。
実際に、入管に行き、手続きを行う際には、半日〜1日かかってしまうこともあり、例えば、教員が兼任している場合には、本来の役目である、授業についての管理がおろそかになる可能性もあり、生徒の指導を行っている方では、その日は、生徒の面倒を見れないという事態も引き起ります。
この場合、いちばん困るのは、生徒です。生徒が困っている状態の学校は、信用がなくなってしまい、学校を円滑に運営ができていないとみなされ、結果的に、安心して生徒を預けることが、できない学校となってしまいます。
問題を解消するためには、大切である生徒の相手を、いちばんの優先として、他のやらなければならない作業については、役割分担ができる体制を整えることです。
そのためには、人的確保も、必要となります。ですが、生徒の為に行うことは、結果的に、学校運営を良好に回すために必要な要件となるのです。
対象となる生徒の母国語が必須
面倒で、時間のかかる手続きに加え、学生の管理、また、日本語を習いに来ているということもあって、日本語が通じない生徒が、ほとんどになります。
そんなとき、良好なコミュニケーションを図るため、生徒の母国語であったり、英語などで、対応することができる者の常駐が必須となります(学校様子にもより、緊急時のときだけで十分という雰囲気であれば、常駐でなくても構いませんが、日本語で落ち着いて話すことができない場合など、母国語のスタッフがいることで、生徒の安心につながります)。
意思疎通が、しっかりと出来なければ、生徒の不安な気持ちが、解消されることができず、その気持ちのまま、授業を受けるとなると、結果的に、学問に集中することもできない状態になってしまうので、結果として、生徒にとって、良い環境とは言えません。
目的は、日本語を学びに来ているのですから、生徒の心のケアをすることは、必要不可欠になるのです。
教育機関である以上は、生徒が学びやすい環境を設定することは、最低限の義務になります。
そういった、心のケアをする事務スタッフの対応は、なくてはならない存在であり、先生よりも、生徒にいちばん近い距離ポジションであると言っても過言ではありません。
犯罪抑止の役割
異国の地で不安になってしまう生徒に対して、ケアをしなければなりません。
このケアについては、教員が兼任して行うと言って、授業がおろそかになってしまっては、教員失格です。ですので、この心のケアは、事務スタッフが行うことが、懸命の選択となります。
不登校になったときにも、生徒に家を訪ねたり、学校を退学するということになれば、帰国しなければなりません。その帰国も、チケットを取って、空港まで送り届け、飛行機に乗ったことを確認し、両親に伝えなければならなというところまで、学校の責任となります。
ビザが切れてしまう状態のまま、不法に滞在させてしまうのは、犯罪行為であり、放置しているというのは、学校側にも問題行為となってしまいます。
こういったことも含めて、生徒の管理をしなければなりません。
生徒の対象国である母国語のスタッフを雇用する場合には、そのスタッフとの意志疎通を、良好にしておくことは、不可欠な要件となります。
相違点もないようにしていかなければならず、常にコミュニケーションを図ることができる人格でなければならないと考えられます。
生活指導担当者と、入国在留事務担当者
事務スタッフと、省略しておりましたが、具体的には、生活指導担当者と、入国在留事務担当者になります(事務専門のスタッフは、含んでおりません)。
生活指導担当者は、その名の通り、生徒の生活を指導する者になります。
日本にいる限りは、日本のルールに従わなければなりません。学校の生徒である以上は、知らなかったでは済まされず、生活指導も、重要な役割として、しっかりと考慮する必要があります。
入国在留事務担当者は、ビザの手続きや、生徒の管理が主な業務内容となります。こちらの担当者の多くは、生活指導担当と兼任される方が多くなります。
日本語学校を設立する際の書類には、本当に細かな内容は、なくても良い状態になっていますが、授業のカリキュラムと同じように、生活指導の内容について、段階や、ケースを設けたり、指導の方法も考えておく必要があるものになるので、開校前に用意をすることで、生徒に対して、落ち着いて対処することができます。
入管協会の研修会
入国在留事務担当者が抱える、実際の業務内容については、一体何があるのか?
この手続きについて、入管では、研修会が定期的に開かれており、「外国人の入国・在留手続と申請等取次」を勉強することができます。
どんな内容なのか、ここで把握することができるので、担当者の方は、参加されることを、おススメします。
◆入管協会の研修会「外国人の入国・在留手続と申請等取次研修会 」
まとめ
日本語学校では、日本人を相手にするのではなく、外国人を相手にするため、それに伴うケアが必要になってくるということを、念頭に置かなければなりません。
外国人の生徒が、快適に過ごしてもらうためには、どうすればいいのか、生徒が心落ち着く居場所を、用意することは、教育機関であれば、最低限必要な要件となります。
それを実現するためには、日々改善が必要となります。日本人を対象とする学校でさえ、難しく、それが外国人になるのですから、尚更に、十二分なケアが必要となってきます。
日本では、いじめの問題が数多く報道されていますが、日本語学校でも、いじめられる生徒は、頼れるご両親は、側にいませんので、事務スタッフが、時には親代わりとなり、相談を聞く友だちになったりという役割が求められます。
業務が忙しいから、人手不足だからということを理由にして、生徒を誰も相手にしてもらえなかったら、その生徒の心は荒れてしまい、犯罪を犯してしまうという可能性が、高くなってしまうのです。
日本では、自殺をしてしまう傾向がありますが、海外では、宗教の問題や、習慣にもよりますが、人に危害を加える傾向が予見されます。
こういった責任も、日本語学校にあるということを、忘れてはいけません。学習するために、日本語学校に来ていますが、精神を安定している状態をつくる環境を整えなければ、学習どころではありません。
この快適な環境を用意するのも、日本語学校の役目となり、事務スタッフも、環境の一部として、考えなければならない、実は重要なポジションなのです。
これから、日本語学校の設立を考えている方も、設立をされた方も、“事務スタッフ”についての意識を変える、きっかけとなり、より良い学校運営に、お役立ていただければ幸いです。