日本語学校設立"応援"ブログ

学校運営

日本語学校これまでと、これから

mm投稿者:松村 愛

日本語学校

「日本語学校」という教育機関が日本に出来てから、35年(1983年〜2018年現在)の間、日本語学校がどのように歩んできたのか?

これまでのことを知ることで、これからのことも見えてきますので、日本語学校のこれまでとこれからを、ご紹介します。日本語学校の設立を考えていらっしゃる方も、日本語学校を運営している方にも、今後、日本語学校をどうしていけばいいのかを考えるきっかけになってくれれば、幸いです。

1983年 留学生10万人計画発表

日本語学校を知るには、留学生のことを知る必要があるので、留学生の推移を追います。

留学生が増加すれば、日本語学校も増加する傾向があります。需要がなければ、供給することもできないので、当たり前と言えば当たり前です。では、どうして留学生が増加したのか?という疑問があるのではないでしょうか?

留学生の増加は、国の方針によって左右しているというのが、理由となります。この留学生は、1983年に「留学生10万人計画発表[※1]」がされました。この時は1万人程度だったので、そこから、10万人?は無謀な目標だとされていたそうです。具体的には、2000年までに留学生を10万人にするという目標になります。この、10万人計画は、2003年に達成されました。

「留学生10万人計画」達成の経緯

【引用】「留学生10万人計画」達成の経緯
東京情報大学研究論集 Vol.13 No.2 pp.40-52 (2010)

「10万人計画」が始まったのとほぼ時期を同じくして入管が規制緩和を行い、日本への留学を希望する外国人本人に代わって日本語学校が一括して所轄の地方入国管理局にビザ取得手続きを申請でき、身元保証人も日本語学校が機関で引き受けても良いことになった。

そのため、急激に就学生の入国者が増え、その結果日本語学校を隠れ蓑にした不法就労者や不法残留者が増大した。

この事態を重く見た入管は日本語学校のビザ申請に対し厳格な審査を行い、「就学生」が激減、つまり新規入国者が激減し、それに伴い、「留学生」総数も停滞したのである。[※1]

この国は、留学生の受け入れ緩和を行うが、実際に留学生を管理するのは、入国管理局(以下、入管と省略する)です。国の方針とは裏腹に、入管のシステムが整っていない状態であるという関係は、現在も続いているような状態です。国と入管のラインの統制が図られていないというジレンマは、これからも続いていくようです。

新しい方針を考えたら、それを実行するためのプロセスを細部に渡るまで考えられていないので、入管の職員がいちばん辛い立場なのではないかと思われます。

2008年「留学生30万人計画発表」

無理だと思われていた10万人が達成し、10万人から20万人を飛ばして、30万人の計画が発表されることになりました。この20万人を飛ばしているあたりから、勢いに乗っているのが伺えます。こちらは来る2020年までに、留学生を30万人受け入れるという目標となっています。

留学生とは、大学に留学しにくる者だけではなく、高度専門職、技能実習、技術・人文知識・国際業務なども含まれ、この他として、増加傾向にあるのは「日本語を学びたい!」という人たちの存在です。こう言った人たちが増えることで、日本語学校が増えていく傾向になっています。

これまでは留学生を増やそうとして、増加傾向とビザの厳格化を繰り返し、上がったり、下がったりを繰り返して、緩やかに右肩上がりというのが留学生の推移となり、同時に、日本語学校の数も比例しています。

バブル真っ只中の日本語学校

話は前後しますが、1983年〜1992年までの10年間は、バブル真っ只中にありました。この時期は、出稼ぎの労働力を必要としていたという背景もあり、個人でも会社でも、日本語学校を作ることができる自由形態であったこともあり、入学許可書が乱発していたのだそうです。

入学許可書の申請書には、偽造されていることが多かったこともあり、この問題を解決すべく、法務省がビザの発給を厳格化したのもこの時期です。

この波に乗って、中国の若者たちが、入学金と授業料を借金をしている状態でもいいから出稼ぎに行きたいという野心で、このビザの発給を要求で、上海総領事館(現在:在上海日本国総領事館[※2])を取り囲んだ事件(上海事件)が発生してしまう程の歴史的事件が起こってしまいました。

日本語学校の設立が増加し、留学生を厳格化するだけでは、日本語学校自体の質が保たれないという問題があり、この混乱状態のなか、一般財団法人日本語教育振興協会(以下、日振協と省略します[※3])が、日本語学校の質を見る立場として設立されました(1989年)。

日振協が設立されてからは、日本語学校の数は減少傾向をたどっていきますが、株式会社、有限会社の設立形態がもっとも多いというのが特徴であり、その自由度も相まって緩やかに上昇と減少を繰り返しています。

2010年 法務省が日本語学校教育機関の告示審査を行う

2010年になると、事業仕分けが行われました。具体的には、事が大きいということもあって、日振協の審査認定ではなく、法務省が告示審査を行うことになりました。

日振協の審査認定は、告示の参考にはしなくなったことから、新規校の参加が減少していきます。日振協の会員資格についても、更新しない学校が続いていきました。

そんな中で、2011年からは法務省の告示校が激増し、2017年では78,658校存在しています(日本学生支援機構「留学生の推移から」[※4]

日本語学校のこれからの課題

問題と課題

事業仕分けされたが、現在もなお教育の“質”については、取り沙汰されている状態となっています。現在、日本語学校の質を向上させる手段としては、「自己点検・評価」のみとなっています。

法務省では、告示校の中に教育の質が取り沙汰されている学校が、存在している状況であると認識し、2017年8月に新基準の施行するも、その根本的な解決には至っていない状態であることが現在の懸念となっています。この“質”については、これから大きな課題となっていき、この質について、き出すことは明確であると考えられます。

今後の日本には、日本語能力N4レベル(日常会話ができる程度)の外国人を、5年という期限を設けて受入れ、労働拡大していく方針が進んでいることもあり、外国人が押し寄せてくることが予想されます。

それと同時に、日本での労働内容が果たして、N4レベルで円滑に回るのか?とは、個人的には思いません。地方にいけば、方言もありますし、言葉足らずになった場合に、怒られてばっかりになり、行方が分からなくなってしまう、または、犯罪に走ってしまうという可能性もあります。

このケアは一体どうするのか?という問題は、国がどう考えているのかは不透明です。おそらく、この外国人たちの語学を向上するために、日中は労働し、夕方からは日本語の勉強をするということも考えられ、日本語学校の需要が今よりも高まっていく予想も考えられます。

需要はあるが質が保たれていない学校が増えることは問題であるので、これから先は質を満たすべき新基準が徐々に作られていき、その内容を満たしているかどうか、という確認作業を重ねていくのではないかとも考えられます。

「急に言われても困る!」とならないためにも、各学校さまがそれぞれの“質”を向上させるための対策を独自で考え、実践していくことが賢明ではないかと思われます。

経営を圧迫するほどの取組はできないのが現実問題としてあり、教員はただでさえ普段から忙しいので、無理のない範囲で計画を立てていくことは、これからの日本語学校経営には必須になっていくのではないかと、思われます。

参考サイト

[※1]「留学生30万人計画」の実現可能性をめぐる一考察
東京情報大学研究論集 Vol.13 No.2 pp.40-52 (2010)
http://www.iic.tuis.ac.jp/edoc/journal/ron/r13-2-4/r13-2-4b.html

[※2] 在上海日本国総領事館
http://www.shanghai.cn.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html

[※3] 一般財団法人日本語教育振興協会
http://www.nisshinkyo.org/

[※4] 外国人留学生在籍状況調査結果 平成29年度
https://www.jasso.go.jp/about/statistics/intl_student_e/2017/__icsFiles/afieldfile/2018/02/23/data17.pdf

平成29年度外国人留学生在籍状況調査等について −留学生受入れの概況− 平成29年12月27日
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/__icsFiles/afieldfile/2017/12/27/1345878_01.pdf

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